日時:2025年8月2日(土)10:30~15:30
会場:イノーベーション・ハブ・ひろしまCamps
塾生21名を迎え、第4期生の入塾式が始まりました。
起農みらい塾を主催するJAグループ広島を代表して、JAバンク広島 大柳氏の挨拶です。
「ここでは普段学校で学べないことがたくさんあります。農作業をはじめ、商品の企画・販売などさまざまな体験の機会も用意しています。みんな、楽しみにしてくださいね」
続いて保護者へのメッセージでは、入塾への感謝と塾生の成長を期待させる言葉でした。
「起農みらい塾にご参加いただき、ありがとうございました。お子さまが社会に目を向け、見つけた課題を自分たちの力で解決する自主性、異なる学年でいっしょになって取り組むことで身につく他人や集団と関わる力、そんな社会と関わる力や自立する力を養うカリキュラムをご用意しています。これからの4ヶ月間、私もお子さまの成長が楽しみです」
起農みらい塾の説明は、ディレクター兼講師の大野先生です。
「みんなは、この塾で何をやるのかな?わからないと不安になるよね」
どのような塾なのか最初に共有する大切さを話しながら、簡潔な言葉で起農みらい塾で行うことを示しました。
「食と農を知り、考え、そしてビジネスを学ぶ、体験する、モノを売る」
さらに、本日の3つのミッションが伝えられました。
1. みんなの名前を覚える 2. 塾の最終ゴールを知る 3. ジャムを考える です。
「???」
突然の“ジャム”に、塾生の反応は素直で、意味がわからず、不思議に思っている様子でした。
大野先生は、あとのお楽しみと匂わせの表情で、スタッフ紹介に移りました。
授業運営補佐の山口先生や塾生をサポートする大学生スタッフが、起農みらい塾ならではの“農業エピソード”を交えて自己紹介をしました。
入塾式のラストは、大野先生から授業での学びあいのルールの発表でした。
「まず、人の話は否定せずに最後まで聞くこと。自分と相手の意見が違うから面白いんだ。次に自分の意見が通らなくても、とりあえずやってみよう。新たな発見がある。ルールを守って楽しくやっていきましょう!」
塾生は学校や学年が違い、お互いのことをよく知りません。そこで、大野先生は、名前を覚えて仲よくなるきっかけを与えるために「お名前ビンゴ大会」を企画しました。ビンゴカードには16のマス目一つひとつにお題が書いてあり、その条件に当てはまる人を見つけるとクリア。タテ・ヨコ・ナナメのいずれか一列揃うごとにご褒美がもらえます。クリアするためには、いろんな人と積極的に話しかけることが必要です。
マス目に設定された話のネタをもとに自然と会話が弾んでいました。
「ビンゴ!」
しばらくすると、教室中に4マス揃った塾生から元気な声が次々とあがりました。すべてクリアしたパーフェクト達成の塾生も見られました。
塾生同士がふれあうなか、教室の雰囲気も和らいだところで、次は目標を定め、みんなで頑張る合言葉“スローガン”を考える時間です。
一人ひとりが自分の目標を書き、各班で1つにまとめて発表しました。
A-①班「協力して、楽しくしっかり学ぶ」
A-②班「みんなでがんばって食品を売り切ろう」
B-①班「60万円めざして売り切ろう」
B-②班「みらい塾 笑顔だいじに最後まで」
ここで大野先生から提案がありました。
「今発表した班ごとの目標を生かしながら、塾全体のスローガンを考えてみませんか?」
決定したスローガンは、『協 学 伝 笑(きょうがくでんしょう)』
漢字1つひとつに思いが込められ構成され、四字熟語のように覚えやすい言葉です。今後このスローガンを意識して授業に取り組むことになります。
学びの準備を済ませ、ここからは本格的な授業がスタート。JAバンク広島 斎藤先生の『広島と日本の「食」と「農業」のおはなし』です。最初に教わったのは、JAグループが食や農業の問題を解決するキーワードとして発信している“地産地消”と“国消国産”。
「なぜ、これらを実践することが大切なのでしょうか?」
斎藤先生の問いかけに、塾生は次々と答えました。
「地元で採れたものだと、新鮮な状態でおいしく食べられるから」
「日本の農家さんを応援できるから、農業を長く続けてもらえる」
「輸入するとそれだけコストがかかるし、環境にもよくないから」
塾生は、“地産地消”と“国消国産”の意味を知り、実践すれば自分たちの食と農業、地域を支えることにつながることが理解できたようです。
次に斎藤先生は、『広島・日本の食をとりまく5つのリスク』をあげて、1つずつわかりやすく説明しました。
1. 食料自給率の低迷
日本の食料自給率は約38%、世界の先進国の中で最下位。さらに、広島県の食料自給率は約22%で全国36位というデータが示され、塾生は驚いた様子でした。食料の輸入が止まれば、食べ物に困り、値段も上がることが想像できます。
2. 農業生産基盤の弱体化
年々農家が減り、高齢化も進み、農業を引き継ぐ人も少ないことから生産力が低下していること。
3. 自然災害の多発
田んぼや畑は、食べ物を作っているだけでなく、災害を防ぐ役目も担っているということ。
4. 世界的な人口増加
食べ物が足りなくなり、奪い合いが起こる可能性があること。
5. 農畜産物を生み出す資材費の高騰
肥料や燃料などの費用が高くなると利益が少なくなり、やがて農業が続けられなくなること。
これらのリスクを抑えるために、JAグループは“地産地消”や“国消国産”を推し、さまざまな支援を行っているそうです。塾生は危機感を感じたのか、真剣に聞き入っていました。
食や農業についての現状を知り、課題を見つけ、問題解決のために自分に何ができるのかを考える授業でした。今後の学びや農業体験、商品企画・販売など、すべてにおいて基本となる知識を得られたようです。
斎藤先生は、授業の締めくくりとして、JAグループ広島の10年後の目指す姿を話しました。
「安全・安心していただける食、それを支える農業、くらしの豊かさを実感できる誰もが過ごしやすい社会にしたい。そのために地域に役立つ、頼られるJAであるように頑張ります!」
責任感に満ちた口調が印象的でした。まさに塾生が大人になった頃に、答え合わせができそうです。
本日最後の授業は、来月、食農ビジネスを学ぶために訪問する、フルーツのテーマパーク『平田観光農園』についての事前学習です。広大な園内には、イチゴやサクランボ、ブドウ、ナシなどさまざまなフルーツが栽培され、当然、季節によって収穫できるものが違います。大野先生は、起農みらい塾の最終ゴール、“販売実習での商品完売!”を掲げ、商品は平田観光農園のサポートで、旬のりんごを使ったジャムが候補になっていることを伝えました。
「普通のりんごジャムって、当たり前すぎない?起農みらい塾らしく、みんなで考えたオリジナルの商品にしてみない?」
大野先生から商品について提案があり、りんごジャムをベースに、何か別のモノをミックスする商品アイデアを考えることになりました。
塾生全員がジャムのアイデアを発表。違う果物を加えてフルーティーな味わいを強めたり、ヨーグルトやハチミツを混ぜたり、食感を考えて果肉を入れるという発想も。さまざまな味の特徴ごとにレシピをまとめた塾生もいました。
今回の塾生のアイデアはすべて平田観光農園に提案して、それをもとに商品化し、10月に予定している販売実習で扱う商品の一つとなります。
第1回の授業を終えた塾生たちの声です。みんな次回の授業を待ち遠しそうに話してくれました。
「周りは知らない人で最初は緊張したけど、ビンゴゲームでいっぱい話ができて友だちになれた」
「お買い物に行ったら、お母さんに広島県産のモノを買うようにすすめたいです」
「お店での販売実習を楽しみにしています。そのために、これからの授業もがんばりたい」