日時:2025年8月23日(土)10:00~15:30
会場:イノーベーション・ハブ・ひろしまCamps
澁谷先生の『おかねのがっこう』の授業が始まりました。学んだことをワークシート“おかね新聞”に記入しながら完成させていきます。
世の中にお金がなかった時代は、欲しいモノを手に入れるために“物々交換”していたこと、そのあとお金の役割を担う物品貨幣(貝・塩・米・布)が生まれたことなどを教わりました。
「お金にまつわる漢字って、“貝”の字が使われています。どんなのがあるかな?」
澁谷先生の呼びかけで、塾生は思いつく限り書き出しました。
買・貯・財・貸・賀・貿・資・負・贔…
たくさんの漢字がホワイトボードに書き込まれ、それぞれ漢字の成り立ちの説明も受けました。
708年に発行された最初のお金「和同開珎(わどうかいちん)」から、昨年、20年ぶりに発行された新紙幣などお金の歴史をたどりながら学ぶ授業でした。
お金の役割、“モノと交換できる”、“モノの価値を比べられる”、“貯めておくことができる”について、日常生活の例を交えたわかりやすいお話でした。また、仕事をすることでお金を手にいれることができるのは、誰かの役に立っているから。感謝の気持ちがお金に交換されていることの気づきもありました。
「お家にあるお金は、お仕事をしてもらった、ありがとうがいっぱい詰まった大切なお金です。みんな大事に使うようにしてください」
おこづかいのお話では3つのポイントがありました。
①何にいくら使うか目標を立てる。
②使うお金と貯めるお金を分けて考える。
③使い道をふりかえる。
おこづかいの上手な使い方は、欲しいモノ(あるとうれしい)と必要なモノ(無いと困る)を分けて考えて買うことが大切と教わりました。
ここからは『おこづかいゲーム』です。所持金1,000円でスタート、サイコロを振って出た目によって自分の駒を進め、止まったマスの指示に従うスゴロクのような遊びです。赤いマス(収入)に止まるか通過すると、おこづかい1,000円がもらえます。青のマス(必要なモノ)は必ずお買い物をしないといけません。オレンジのマス(欲しいモノ)は買う・買わないを自分で判断します。青とオレンジのマスに止まるたびに、商品と値段が書かれているカードを1枚選び、何が出るのかは引くまでわかりません。ゲームで動いたお金の流れは、おこづかいシートに記録します。塾生は楽しそうに、ときには真剣に悩みながらゲームを進めていました。
澁谷先生からゲーム終了の合図です。
「おこづかいシートに書いた残りの金額と手元にあるお金が合っていますか?」
手元に入ったお金、何にいくら使ったのか、お金がいくら残っているのか、おこづかい帳を書く練習になったようです。
「いつもは、欲しいモノがあればおねだりするのに、自分のおこづかいになると迷うよね。その感覚を忘れないようにしてください」
欲しいモノ全部を買うわけにはいかない、価値あるお金の使い方が身につくゲームでした。
そして最後に、澁谷先生からお金との向き合い方、つきあい方を正すことの大切さと自分でお金をコントロールできることが伝えられ、授業は終わりました。
JAバンク広島の斎藤先生の授業は、農業経営のシミュレーションゲーム『今日からきみも社長! お金の使い方を考えよう』です。お金の使い方や稼ぎ方を楽しみながら実践できる内容です。
塾生は農家の社長、野菜を作ってお金を稼いで生活している設定です。シートにお金の出入りや野菜の収穫量を記入しながら進めます。手持ちは1,000コイン、これから起こるさまざまな出来事をクリアし、最終的にどれだけコインを増やせるかを競います。
最初に、ナス、トマト、きゅうりの中から2つを選び、育てる野菜の苗を600コインで買います。次に肥料選びです。自然の力で作った肥料と化学肥料どちらかを買います。化学肥料は値段が高いものの自然の肥料に比べて収穫量が格段にアップします。
次に畑を耕す農業機械を買います。最新型か中古品かで、値段が違い、収穫量に差がでる可能性があるとのこと。ただ、最新型を買うには、手持ちのお金では足りません。JAバンク広島からお金を借りるか、諦めて今あるお金で中古品を買うか…。お金を借りるのは500コインですが、最終的には金利手数料を加えた600コインを返済する必要があります。ここで、最新型を購入した塾生は3名。中古品を選んだ塾生がほとんどでした。最新型の性能(収穫量)はカードを引いて決められました。結果、中古品と同じ収穫量になり、最新型を選んだ塾生は残念がっていました。
次は農薬、買わずに使わないという選択もあります。病気や害虫に対する抵抗力は弱くなりますが、無農薬野菜として収穫できます。塾生全員が真剣に考え抜いて選び、農業経営を行いました。
突然、斎藤先生が叫びました。
「トラブル発生!野菜が病気になってしまいました!」
トマトときゅうりが病気にかかり、収穫量が減ります。農薬を買っていた塾生は助かりました。
最後に、野菜を販売して収入を計算しました。
ここで特別にごほうびがあります。有名な動画配信者がきゅうりを紹介したので、きゅうりを育てた塾生に対して、さらに人気TV番組で無農薬野菜が特集されたので、農薬を使っていない塾生にも追加のボーナスが与えられました。お金を借りていた人は返済し、残ったお金に売上げを足しました。そこから経営スタート時の1,000コインを引いたお金が利益です。収入の上位3名の工夫した点について発表があり、今回は堅実さが勝負の決め手になったようです。
斎藤先生は、ゲームを通して伝えたかったことを話しました。
「お金はよく考えて使わないといけません。それが、いま本当に必要なモノなのか自分に問いかけてください。いつ起こるかわからないアクシデントに備えて計画を立てる、そして、しっかり管理することが大切です。そのために、お金の出入りがわかるおこづかい帳をつけてみましょう」
最後に、広島県の農業・農家さんに対してあたたかいメッセージを加えて授業を締めくくりました。
「農業をやっている方の中には、利益が少なく、生活するだけで精一杯の農家さんもいます。それでも、みなさんに美味しい野菜を食べてほしいという思いで作っています。食べる人のことを考える、それがやりがいになっているのですね。食事のとき、スーパーに買い物に行ったとき、今日シミュレーションしたように、大変な農作業をいつも頑張っている農家さんのことを思い出してくれるとうれしいです」
本日の授業スケジュールに少し時間の余裕ができたので、急遽、『先生のお金の失敗話』というテーマでエピソードトークが始まりました。
授業運営補佐の山口先生のお話です。大学1年の頃に子ども向けのお祭りを企画。手伝ってもらったスタッフに給料を2万円、テントやイスなどのレンタル費用1万円、その他備品に1万円、お祭りの主催者に出店料1万円を支払い、予算5万円を使い切りました。
「ここで、何が失敗だったかというと…。利益はゼロ、自分のことを考えていなかった…。上司からは、お金の収入と支出のバランスをきちんと考えるようにと諭されました」
これに対して、塾生からストレートな質問がありました。
「どうして、後先のことを考えずに行動したのですか?」
山口先生の答えは、自らの反省を込めたものでした。
「利益を出さなくても、来場者を楽しませて知ってもらうことに価値があると思って、PRを第一に考えていました。上司はある程度の利益は必要との考え方だったようです。前もって話し合ってお互いの思いを一致させておけばよかったです」
次は大野先生のお話です。10数年前に教育関連の事業で起業したとき、仕事が少なく、教育現場やイベントなどに関わってもボランティア状態だった過去をふりかえりました。給料がなく、奥様をどう納得させるべきかで悩んだそうです。
「どうやって乗り越えたと思う?」
塾生からは、銀行でお金を借りたと声があがりましたが、大野先生は実家が経営していた会社の役員になって、そこで収入を得たそうです。
「どうして、違う仕事をして儲けようとしなかったのですか?」
塾生の1人が鋭い質問をしました。
「稼ぐ自信があったので、自分の思いを込めた教育の仕事を変える気持ちはまったくなかったです」
誰もやっていないことを実行する、それがビジネスのチャンスになるとの言葉が続きました。
実際、大野先生は失敗からいまの成功へとつなげています。将来に向けた大きな目標を決め、どうすれば実現できるかを考えて日々行動しているそうです。
「失敗した方が、人生はおもしろい。乗り越えると強くなる」
塾生のチャレンジを期待する大野先生からのメッセージでした。
ここから、次回、平田観光農園での授業の準備の時間です。
「この塾は、訪問先で見学して一方的に教わるだけではありません。平田観光農園の社長と意見交換できるくらいに自分の考えを伝え、話し合いができるようにしておきましょう!」
大野先生は、学びの姿勢の大切さを伝えたあと、ヒアリングするポイント4つを話しました。
①ジャムづくりについて ②収穫体験について ③農業の課題について ④観光農園の経営について
この項目に沿って、塾生一人ひとりが現状を調べて疑問点を整理、質問したいことをシートに記入します。タブレットやスマホを使って調べることになりました。大学生スタッフのサポートもあり、順調に進み、そのあとは調べたことを塾生どうしで共有しました。
今日まとめた質問シートは、9月6日・13日の2日間、平田観光農園での食農ビジネスの学びの質問・発表の時間で活用します。授業レポートをお楽しみに。
第2回の授業を終えた塾生たちの声です。お金やモノに対する意識の変化が見られました。
「いつもは、欲しいモノがあると我慢せずにわりと買っていました。今日教えてもらったことを活かして、使える金額を設定して、計画を立てて使うようにしたいです」
「将来お金に困らないような話をしてもらったので貴重な体験になった」
「農業のシミュレーションで、ちょっとしたことでも、その先の大きなことにつながっていくことにびっくりした。お金は無限にあるわけじゃないから、中古の農業機械や収穫量を増やすための肥料を選んで工夫した。これから大人になるときに、分かれ道がでてくると思うけど、将来のためやモノの価値を考えていっぱい悩んで判断したいです」