日時:2022年9月18日(日)10:30~17:00
会場:イノーベーション・ハブ・ひろしまCamps
「起農みらい塾」全10回の授業も折り返し、いよいよ後半のスタート。生産・加工・流通の現場訪問が続いていたので、「ひろしまCamps」の教室で学ぶのは久しぶりです。前回までに実際に見て体験したことを生かし、販売活動の本格的な準備を今回と合わせて2回に渡り行います。
「10月の販売に向けて、必要なことを決める準備の1日になります。今日は特にみんなの発言や聞く姿勢がとても重要だよ」と大野先生は伝え、改めて“話し合いの3つのルール”を確認しました。子どもたちが仲間と楽しく学ぶ雰囲気への慣れが、たまに自由過ぎる言動につながっていることに気づいていたのです。「人の話は否定せず、最後まで聞くこと」、「自分と相手の考えが違う理由を考えること」、「自分の考えが通らなくても、やってみること」。大人でもこのルールを守るのは難しいことです。でも、子どもたちにかっこいい大人になってほしいとの願いが、大野先生の真剣な表情から感じられました。販売活動の準備はお互いを尊重し、チームとしてまとまることが大事。そのための話し合いのルールです。「今日からまた初心に返って学んでいこう!」と声かけし、授業が始まりました。
最初に商品内容を決めていきます。前回、とれたて元気市のスタッフやお客さんにインタビューした結果を元に、食べやすさや彩りに配慮しながらグループ内でライスバーガーと食材の組み合わせをまとめました。すべてのグループの内容が出揃い、そのあと1つに絞り込む大変な作業が待っていました。
グループの代表者が話し合い、最初に大野先生に言われたルールを守りつつ、みんな納得いく内容に落ち着いたようです。決まった内容はメインの「ライスバーガー」と付け合わせの「フライドポテト」と「ブロッコリー」。ドリンクは「はるか」「不知火」「はっさく」などをミックスした県内産柑橘ジュースとし、単品販売やライスバーガーとのセット販売も行います。
中身が決まったので次は商品名です。大野先生は有名ハンバーガーチェーン店の商品を例に、売れやすいネーミングのヒントを説明しました。「商品の特徴がわかりやすい」、「覚えやすくて印象に残る」、「語感がよく、口ずさみやすい」、「インパクトやオリジナリティがある」、「ストーリー性が感じられる」などのポイントを教わり、グループごとに推しのネーミングを1つ発表しました。バンズの特徴をとらえた「ベジライスバーガー」、具材の魅力を表現した「牛ギュウバーガー」、単純明快な「ライスバーガー」、焼印をイメージした「米パンダ」など4つの案が出ました。再度みんなで考えた結果、“牛ギュウ”のワードは絶対外せないという意見が多く、最終的に商品名は「牛ギュウ!!ライスバーガー」で決定しました。
次は商品を売るためのキャッチフレーズです。大野先生から「牛ギュウ!!ライスバーガー」を買いたくなるように、20文字くらいで商品を魅力的に表現するという課題が出され、「誰に売るのか、どんなメリットがあるのか、短く、語呂よく、テンポよくね」とヒントをもらいました。
グループのアイデアの中から「広島産和牛を野菜ジュースで炊いたお米でギュウとはさんだバーガー」になり、みんなで一斉に声に出して読んでみました。子どもたちからは、「長いな〜」、「でも、きちんと説明できているよ」、「説明文みたい…」などいろいろな意見があがりました。大野先生は「もう少し短くできないか、考えてみよう!」と促しました。
「広島産和牛」の部分を「広島和牛」に変えて1文字単位で短くしたり、1つの文章を2つに分けたり、無駄な言葉を取り除いたり。最終的に「広島和牛をギュウ!野菜ジュースで炊きました!」になりました。特徴を言い表したすばらしいキャッチフレーズの完成です。
販売価格を決めるために、経営で大切なMQ会計表を見ながら説明を受けました。 大野先生は、みんなの儲けになる部分はどこだろうと問いました。「P(価格)−V(原価)=M(粗利単価)の部分ね」、「ライスバーガーはタダでもらえない。仕入れでお金がかかる、それが原価です」。子どもたちは原価がわからないと、価格は決められないことを理解し、商品のライスバーガーやフライドポテト、ブロッコリー、ドリンクの仕入値をグループで手分けして調べました。
原価を確認して価格を決め、販売数の目標を設定、子どもたち一人あたりいくらの儲けになるのかを計算してみました。ライスバーガー(フライドポテト・ブロッコリー入り)の売値は1個600円で、販売目標は100個。ドリンクのセット・単品販売も踏まえて、儲けは1人あたり約1,500円になります。大野先生は「売れ残ることは考えないように。当日はがんばって売り切りましょう!」と子どもたちを勇気づけていました。
販売方法についてアイデア出しの時間です。子どもたちが考えた販売トークは「広島和牛を使ってます!」、「本日限定!」、「私たち、みんなで考えました!」、「売り切れ次第終了です!」など購買意欲をあおる絶妙な呼びかけでした。電卓やお釣り、金庫、食品用手袋、プライスカードや看板、POPを作るための画材など必要な備品を書き出しました。事前の宣伝は、とれたて元気市へのポスターの掲示、当日は呼びかけや店内放送、チラシ、POPなど、お客さんを集めて買ってもらう方法をまとめました。元気で楽しい売場になりそうです。当日はすべてではありませんが、できるだけ子どもたちの希望が叶う形になればいいなと思います。
最後に子どもたちの今日のふりかえりです。「実際に販売する商品の値段や名前、キャッチフレーズを考えられて楽しかった」。「MQ会計を初めて知った。価格を決めるのが大事だと思った」。「儲けるための売値のつけ方の難しさと苦労がわかった」。様々な感想が聞かれ、販売に向けての具体的な作業の中で、子どもたちにビジネスの視点が着実に根づいているのを感じました。